今回は求職者の意識と企業側が考える意識の差について、福利厚生という観点から述べたいと思います。
データを元に話を進めていきたいと思います。
エンジャパン㈱様の転職希望者向けアンケート結果です。
まず「現在(または直前の会社)に入社する時に福利厚生の有無・内容を重視しましたか?」という質問に対してです。
下記の図を参照してください。
現在(または直前の会社)に入社する時に福利厚生の有無・内容を重視しましたか?
特に20代(赤枠)に絞って話を進めていきたいと思います。
「かなり重視した」13%、「まあまあ重視した」が32%です。あわせて45%です。
まあ、この結果は特に驚くこともなく大体の方は妥当な線かなという感想をお持ちだと思います。
そして次の質問です。
「今後、転職先を検討する際、福利厚生の有無・内容を重視しますか?」という質問です。
繰り返しますがこれらのアンケートは転職を考えている求職者向けのアンケートです。
下図が2問目の結果です。
今後、転職先を検討する際、福利厚生の有無・内容を重視しますか?
「かなり重視する」が一気に44%まで跳ね上がっています!
「まあまあ重視する」を合わせると83%です。先ほどの45%から激増しました。
特に「かなり重視する」という非常に強い意志を感じさせる答えが激増という結果です。
ここから何が見えてくるのでしょうか。
一問目は今現在辞めようと思っている会社に就職する際の意思状態です。
かなり重視は少数派です。それが次に職場を選ぶ際はかなり重視するが多数派になりました。
つまり以前は重視しなくて失敗したと思っている訳です。もう福利厚生で失敗しないぞという強い意志の表れです。
ここでひとつの問題があります。
求職者は面接の際に本心は言わないということです。
本心を言わないというと語弊がありますが、正確に言うと自分にとって採用に不利なことは正直には言いにくいということです。
例えば、志望動機として「福利厚生がしっかりしている」ことを上げたらどうでしょう。
採用側とすると「そこ?」ってなります。
前の会社を辞める理由、転職理由も様々なシナリオを考えてきます。待遇がきつくて半ばブラック企業のようなところだったとしても転職の際、前の会社の悪口はご法度と言われています。
もっともらしいシナリオを策定して、待遇が悪くて疲弊して転職を決意したことを隠す人が圧倒的に多いのです。
採用する側としては相手が何を言ったとしても、目の前で面接を受けている人は確率的にも福利厚生を程度の大小はあるにしても重視しているのだという認識を持つ必要があります。言葉では何と言ったとしてもです…。
ここで採用側と求職者側のすれ違いを表す図表を出してみましょう。
今度のアンケートは企業側に出したアンケートです。同じくエンジャパン㈱様の福利厚生に関するアンケートです。
それは「福利厚生の導入の目的は何ですか」というものです。
その結果が下図です。
福利厚生の導入の目的は何ですか?(複数回答可)
当たり前と言えば当たり前ですが「社員の満足度UP」がトップです。
これは当然の結果かと思います。
しかしです。
採用力UPを目的として挙げているのがわずか7%でトップの5分の一しかありません。
これまで見てきたように求職者の85%が応募する段階で重視しているにも関わらず、企業側は全くと言っていいほど意識していないのです。
まあ、満足度が上がればそれも応募動機につながるとは言えなくもないですが、戦略的に採用力強化のために利用しようという意思があまりにも低いのは戦略的にどうかと思います。
取りこぼしは少なくないと推察します。
採用力は総合力です。
競合他社に比べて圧倒的なブランディングができている企業は別ですが
普通の企業であればこれをやれば必ず上手くいくという様な決め手となるスーパーな打ち手などありません。
些細なことを地道に、可能性のある打ち手を一つ一つつぶしていって総合的に上手くいくかどうかという世界です。
その打ち手を考える上で求職者の意識、20代の若年者の意識に注意を向けることはとても大切なことです。
企業におけるマーケティングで顧客の意識に注意を向けるのと同じように…
【執筆者】
株式会社ワーススタイルホーム
法人営業部 責任者 阿部素成
1969年東京生まれ。2014年、法人向け福利厚生サービスHOMEBASEの立ち上げに参画。当サービスの企画・運営・戦略立案・顧客開拓などに携わる。過去の職歴は教育関連のBtoC営業からスタート。その後管理職となりマネジメント、採用、人材育成、組織構築を経て、2007年不動産系ベンチャーの賃料適正コンサルティング会社の立ち上げに参画。東日本トップシェアまで成長したのを期にベンチャー企業向け採用コンサルティング事業にて独立。主に若年者向けの人材育成など「人と組織」にかかわった業務に携わる。BtoBtoCの福利厚生×不動産事業は未知の領域だが「採用と住まい」の視点で事業を作りこみ業務拡大し現在に至る。