採用難といわれている時代ですが、特に外食をはじめとするサービス業が苦戦しています。

今回はその原因と対策を考えてみたいと思います。

まず採用難になった理由はいくつかあげられますが、おそらく下記の要因があるかと考えます。

1.少子化(若年層の絶対数の減少)

2.「売り手市場」による二極化

3.若年層の意識変化

4.ブラック企業を極端に恐れる風潮

 

順を追って解説していきます。

 

1.少子化について

いうまでもなく少子高齢化が進んでいます。

population上図のように、2005年の20~24歳の人口は約735万人。それに対し2010年が642万人。この層の人口は5年で実に100万人近く減少しており、2035年には500万人まで減少すると推計されています。そもそもの絶対数が確実に減少しており、今後も少なくなるパイの奪い合いが続くのです。

ここから言えることは若年者一人当たりの価値が上昇しているのです。

※国立社会保障・人口問題研究所調べ

 

2.売り手市場について

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平成21年から27年の6年間で有効求人数は130.9 万人から 237.7 万人になり106.5万人増加し、有効求職者数は 276.2 万人から 209.3 万人に 78.3万人減少しました。求人数は大幅に増え、職を求める求職者は大幅に減少しているのです。

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厚生労働省「職業安定業務統計」

有効求人倍率も1.20倍となり平成になってからの統計でみると平成3年に続く過去2番目に高い水準となっています。
仕事を選ばなければ職には就ける状態になっており、完全なる「売り手市場」になっているのです。

なるべく安定性や将来性のある業種や会社を選べる状態になっています。5,6年前と逆転し完全に選べる状態になっています。

優秀な人材は一部の人気のある企業へ集中して、それ以外の企業へはあまり意欲的でない人材が集まるといういわゆる二極化現象が起こっています。

 

3.意識変化について

色々な場所で若者の意識変化については述べられているのでここではあまり詳しくは述べませんが、総じて競争心や金銭欲などがあまり強くないことがあげられるでしょう。

お金を稼いで高い車を乗り回したり、高級マンションに住んだりということにあまり価値を感じません。

必ずしもお高い給与額を提示すれば人が集まる傾向も少なくなっています。

・失敗を恐れる傾向が強く、安定や安心、失敗しないことを優先する

・孤立を恐れる

・社会に役立っている実感や感謝される経験などを尊く感じる

・周りにどう見られるかを気にする

・両親との心理的な距離が近く、親の意見に左右される傾向がある

・正解を求める傾向も強く、曖昧さや答えの見えにくいものに関して不安を感じる

 

 

4.ブラック企業問題

2014年あたりからブラック企業というフレーズを多く聞くようになりました。

某居酒屋チェーンがその代名詞のように語られ、大きくブランドイメージを壊したことは記憶に新しいことでしょう。現在の若年者にとって会社選びの重要なファクターとしてブラック企業でないかどうかが重みを増してきているのです。
またその基準も一人歩きしており、通常の会社で行われていることもブラックなのではという目で見られることも多々あるのです。企業ブランドイメージがすごく大切になります。

内外への発信力、見せ方も採用における重要なスキルとなっています。

下図は「就職活動中、どんな不安を抱いているか(いたか)」アンケート結果です。

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就職活動に関する調査 日本労働組合総連合会 2014年

就職できるかどうかが不安の第一位というのは、当然といえば当然ですが、第二位がブラック企業に対する不安です。

それだけブラック企業に対する恐れは大きく、過度に反応する人も少なくありません。

ではどうすればいいのか

「人口が減っている」「売り手市場」「意識変化」「ブラック企業問題」これら四つの要因から採用が難しくなっていると説明してきました。
ではどうすればいいのか。

逆算してみると対策が見えてきます。

その対策について述べたいと思います。

 

 

まず人口減の問題ですが、

現実の問題として絶対数が減っているのは事実ですから大量に集めて次々退職してまた大量に採用してという考え方はこれから通用しません。

少ないパイ、つまり限られた若手人材市場自体を大事に育て上げていく感覚が必要であり、繊細さが求められています。
何よりも現在の若年層の心理をしっかりとつかむことが大切です。

採用だけを単体で考えるのではなく、採用後のこと、一度入社した人が末永くその会社でキャリアを積むことができるように受け入れ態勢を万全にすることも採用と同時進行で必ず行わなければいけません。

採用した社員をしっかりと教育して、生産性を上げることも少ないスタッフで効率よくオペレーションを回す上では重要です。

採用と教育をワンセットで考え、入社後の教育体制に力を入れる。
教育なくして定着なしと心得る。

そして接客などサービス業に性格的にも向いていて、好きな層は一定数必ずいますので、大切にそういった層をつかんでいくことを考えることが大切です。

 

 

次に売り手市場についてですが、

受け皿である企業が良ければ良いほど集中して良い人材が集まってきます。
むしろこの状況を好機ととらえ、企業イメージ力やブランド力の強化に力を入れ、他社より抜きんでた会社になるべきなのです。

どんな人も価値のあることに自分の時間を使いたいと考えています。
職場にただ通って「作業」をして時間が来たら帰ってくるだけの単純な職場を求めている人はいません。

その商品やサービスを提供することで世の中のどの部分の問題解決をすることができるか、
この会社が社会に存在している意味は何なのか、
この会社で働くことでどのような未来を手に入れることができるのか、

売り手市場の今だからこそ、こういった部分にしっかりと目を向けて会社の本質的な存在理由を明確にすることで入社することの価値を高めることが重要です。

もちろん、採用担当者のみでできることではありませんので、会社全体として今一度会社の存在理由やここで働くことの意味などの作りこみが必要かと思います。

そして、それを言語化して発信することが意味を持ちます。

情報がSNSなどで素早く拡散される時代なので、そこをうまく活用してイメージ戦略を強固にしていくことも大切です。マーケティングに近い感覚で顧客を店に集めるように企業イメージを求職者へ向けて広くアピールしていくことも大切です。

この状況下でも採用がうまくいっているサービス業の会社は確かに存在します。
うまくいっている会社はそれなりのことをしています。
採用活動に特効薬はありません。些細なことを地道に愚直に積み上げていくしかないのです。

 

次に意識変化。

これも好機とみる必要があります。これは会社のブランディングと密接にかかわってきます。

まず大切なことは、現代の若者の意識変化の傾向をとらえるということです。

人事担当者や経営者が昔と今は違うという認識をしっかり持つことが大切です。

善悪論ではなく、若者の性向は過去20年間の社会の反映に過ぎません。

昔との比較話は若者にとって雑音でしかなく、双方にとって得はありませんので、その背景にある価値観の相違を認識した上で解決策を考えていくことが建設的です。

この意識変化に対応できる組織づくりや採用プロセスの改善が最も大切な課題かと個人的には考えます。

ただしこれは決して人気取りをするとか、甘やかすという話ではなく、入社した後にどれだけ本人にとっての成長に直結するかを絵としてしっかりと見せられるか否かがとても大切です。

それだけ人材開発部門の求められるスキルも上がっていると考えてよいでしょう。

繰り返しになりますが、いつの世も人は価値あることに参画したいものです。
お金と労働を交換するだけの「作業」に対しては人は熱意を持ちません。

友人に話したくなるような、価値のある仕事に全力で取り組むからこそ、つらいことがあってもがんばれ、乗り越えて成長していくものです。そのプロセスを企業側は意図的に求職者や新入社員に見せなくてはいけません。

この見せ方がうまい企業が採用に成功していて社員のモチベーションの高い企業と言えるのです。

そのためには会社の理念、志、使命感そういったものをしっかりと作りこむ必要があります。

モノやお金に執着するのは高度成長期の人間までです。成熟した社会において、それらはあまり価値を持ちません。少なくとも人生の目的にはなり得ません。

会社からのメッセージが価値のあるものであれば共感する人は増えブランディング度は増します。

そして大事なことは、そのメッセージは採用を成功させるためのツールであってはならず、全社的にその目的が浸透しており全員がその言葉を胸に使命感を持って仕事をしていることが大事なのです。

もちろんこれは簡単なことではなく人事の担当者だけで成し得られるものでもありません。全社的な取り組みになります。しかしこれは採用に効果的なだけでなく、働いている社員のモチベーション、またお客様へのメッセージとなって大きなリターンがある重要な施策になるのです。

最後にブラック企業対策についてですが

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応募する段階で、ブラック企業かどうかを重視する傾向があると述べましたが、それらのもとになっているのが口コミの情報です。現実的にこれだけブラック企業問題がクローズアップされている状態においてはこの問題に蓋をすることはできません。

本当の意味で入社した社員に満足して働いてもらうしかありません。

情報化社会の大きな特徴は、ビジネスで言うと商品やサービスを提供する企業側と様々な情報にアクセスできる顧客側と情報の優位性が逆転したというものがあります。

以前は情報は出回らなかったので供給側に力がありました。しかし今は顧客のほうが強いのです。

クレームは瞬くまに拡散します。供給する側としては本当の意味で顧客満足を提供する必要が出ているのです。

それとブラック企業問題は同質です。

本当の意味での従業員満足を追求していくことが重要です。

繰り返しになりますが社員を甘やかすという意味ではなく、第二の顧客という位置づけで少ない若年者を採用し育てていくことが求められているかと考えます。

 

参考
従業員満足の本質とはー2つの軸

【執筆者】
株式会社ワーススタイルホーム
法人営業部 責任者 阿部素成

1969年東京生まれ。2014年、法人向け福利厚生サービスHOMEBASEの立ち上げに参画。当サービスの企画・運営・戦略立案・顧客開拓などに携わる。過去の職歴は教育関連のBtoC営業からスタート。その後管理職となりマネジメント、採用、人材育成、組織構築を経て、2007年不動産系ベンチャーの賃料適正コンサルティング会社の立ち上げに参画。東日本トップシェアまで成長したのを期にベンチャー企業向け採用コンサルティング事業にて独立。主に若年者向けの人材育成など「人と組織」にかかわった業務に携わる。BtoBtoCの福利厚生×不動産事業は未知の領域だが「採用と住まい」の視点で事業を作りこみ業務拡大し現在に至る。

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