従業員満足の本質とはいったい何なのでしょうか。
従業員満足だけでは非常に抽象的でわかりにくい表現です。
分解して考えてみたいと思います。
2つの軸があると考えます。
まず一つ目の軸
それは目に見えないものです。
「大切なものは目に見えない」
作家サンテグジュペリも著作を通して語っていますが、まさに真理です。
企業とは「人の集まり」に他なりません。
商品は目に見えるかもしれませんが、それを開発したり販売したりするのは個々の人間です。その人間たちを結び付けている「場」こそが会社です。
この「結び付けている何か」がその企業の本質であり、最も大切なものです。
その集まりの輪に加わって、その場が居心地の悪いものであれば逃げ出したくなることでしょう。
その「結び付けている何か」を考える上で現在の世の中の現状をとらえる必要があります。
特に今の時代は若い人を中心にモノやお金、所有といったものに価値を見出す人が減ってきています。
かつては成功者の代名詞と言われた高級車も豪華マンションも目に見えるものです。
それらを追い求める姿はもはや「格好が悪い」ものになっています。
CDの売り上げが激減した代わりに、フェスやライブなど体験型イベントは絶好調です。
またハロウィンイベントや飲食などのお店の体験をSNSに上げることが若い人の主流の行動パターンです。
体験してそれを共有する。モノからコトへと言われる所以です。
ここらへんにもヒントが隠されているかと考えます。
現在の若い経営者の多くはかつてのようなお金を稼いで良い車に乗ってなんてことは考えていません。
事業を成功させたいという強い欲求はありますが、それは自己実現だったり、仲間と物事を成し遂げる達成感だったり、世の中をより便利に良いものに変えたいという純粋な欲求が多いように見受けれらます。
これは若い世代だけのことではなくここ20年ほどで日本人の平均年収は約100万円ほど減っていますが、モノより精神的な豊かさを求める比率が全体的に増えています。
成熟した社会の特徴なのかもしれません。
この時代の変化や価値観の変化に会社も柔軟に変化することが必要です。
従業員の満足度が高く、採用が上手くいっている企業はここら辺をとても重要視しています。
特に若い人の意識変化を。
なぜこの会社は世の中に存在しているのか、
この会社は世の中をどのように変えていくのか、
この会社で働くことの個人としての役割は、
そしてそこで働く仲間を会社はどのようにとらえているのか、
この会社にいることで個人の人生はどのように変わっていくのか、
これらの問いに対して明快で的確に言語化できている企業は強いです。
どんな人も価値ある人生を送りたいと思っています。
しかし、ひとりでできることは限られています。
能力もまだ未熟な人がほとんどです。(もちろん私含め)
しかし多くの仲間と同じ方向を向いて力を結集することで大きなことを成し遂げられます。
会社の仲間と共に価値のあることの達成のために自分の時間を使いたいと思っています。
その器(ステージ)を用意してあげるのが会社の役目だと考えます。
この部分を経営者が考え抜き、共有して末端までその血液が流れていれば、
先ほど申し上げた「結び付けている何か」は確固としたものになり従業員の満足も高まるでしょう。
モチベーションも高く、生産性も上がると思います。
せいそこで働くことで個人も成長できると考えるのであれば成長欲求が高い人も満足できるでしょう。
これらがまず一つ目の軸です。
まあ、平たく言えば経営理念みたいなものなのですが、絵に描いた餅になっている企業が多すぎるのであえてその言葉は使いませんでした。
もう一つの軸は制度です。
これははっきりと目に見えるものです。
どんなに崇高な価値のある仕事をしていたとしても制度面がボロボロでは、いつかは限界がきます。目に見えないものが最も大切ですが、現実の問題として目に見える制度もしっかりと拡充する必要があります。
あまりにも残業が多い、最低賃金ギリギリ、休日、福利厚生などこのようなものもできる限り手厚くする必要があります。
先ほどの目に見えない大切なものを本当に大切にする経営者であれば当然制度も大事にするとは思いますが、これら2つの軸が両輪となってしっかり廻っている会社は強いかと考えます。
確かに利益率の低い業態でしたらあまり給料面を上げることも難しい部分もあるかもしれません。
そこは知恵で乗り切っていくことが経営陣の腕の見せどころかと思います。
何しろ企業の実態は「人」であり人の集合体そのものが企業なのですから、その「人」を大切にしないで何ができるのでしょうか。
それを成し遂げている企業が現実にある訳ですから、そこを目指して精進すべきだと考えます。
【執筆者】
株式会社ワーススタイルホーム
法人営業部 責任者 阿部素成
1969年東京生まれ。2014年、法人向け福利厚生サービスHOMEBASEの立ち上げに参画。当サービスの企画・運営・戦略立案・顧客開拓などに携わる。過去の職歴は教育関連のBtoC営業からスタート。その後管理職となりマネジメント、採用、人材育成、組織構築を経て、2007年不動産事業系の賃料適正コンサルティング会社の立ち上げに参画。東日本トップシェアまで成長したのを期にベンチャー企業向け採用コンサルティング事業にて独立。主に若年者向けの人材育成など「人と組織」にかかわった業務に携わる。今回、個人向け不動産事業は未知の領域だが「採用と住まい」の視点で事業を作りこみ業務拡大し現在に至る。