20年前と現在では、お部屋探しの方法・不動産屋の広告は大きく変わりました。その背景には情報化社会の加速が大きく関係しています。

昔は駅前の不動産屋でしか探せなかった

インターネット普及以前のお部屋探しは、住みたい街に行き、駅前の不動産屋で取り扱いの物件情報を獲得してその物件を見るといった方法でした。

情報化が進んでいないため、物件のオーナーも入居者候補が訪れそうな不動産屋に物件紹介をお願いし、その不動産屋は訪れたお客様に対してのみ物件情報を提供する。いわゆる「街の不動産屋さん」がそれぞれの街の駅前に複数店舗存在し、駅前の好立地にある不動産屋は、物件のオーナーに対して「うちじゃないと入居者が決まらないよ」と強気の態度でも管理物件が続々と集まる。人も続々と集まる。ご近所づきあいの延長線での情報交換がされるのみのクローズな市場環境で不動産市場は成熟してきました。

不動産情報誌に掲載されるオトリ広告

「フォレント」や「賃貸住宅情報」など不動産情報誌がでまわることで、緩やかに情報がお客様の手に渡るようになり、紙媒体で情報を入手した人が不動産屋さんに電話をして物件情報を得るようになります。

紙媒体を利用することで正確な物件情報が消費者へ拡散が進むと思いきや、なかなか進まずむしろ不動産業界イメージに悪影響を及ぼすことにも繋がります。

不動産屋にとって、掲載料を支払って紙媒体に物件情報を掲載することの目的は、消費者に正しい空室物件の情報を伝えることではなく、あくまで新規のお客様を獲得することであり、店舗一面に張り出された物件広告と同様の1つのツールです。物件の掲載料がかかる不動産情報誌に掲載する物件は、もちろんお問い合わせがきそうな物件となり、お問い合わせが来そうな物件=すでに成約済の格安物件が多くでまわることになります。この格安物件は「オトリ広告」と呼ばれます。

結果、情報をクローズすることで優位性を保っていた不動産業界に対して消費者目線でのグレーな印象は一般的なものとなりました。

情報化社会の加速による消費者の知識獲得

国際電気通信連合(ITU)が発表した2013年の年次報告書の予測よると、2013年末には、モバイルまたは固定回線でインターネットに接続するユーザーの総数は27億人になるといわれています。

1人で複数のモバイル・デバイスを利用しているユーザーはいるものの、世帯当たり驚異の96.2%普及率となり、インターネット環境は生活の必需アイテムとなっています。インターネットの普及による情報会社会の加速は、お部屋探しスタイルの変化を生み、不動産業界全体の意識改革を迫る要因となっています。

従来の情報をクローズすることで成立していた不動産屋の優位性は崩壊しつつあります。消費者は、様々な不動産業界の知識を獲得できるようになっています。例えば、募集をしている物件名を認知できる・住みたい物件が特定の駅前不動産屋だけではなくデータベースを利用しているすべての不動産屋で紹介することができることを知る・物件オーナーから広告料がでる物件は仲介手数料が割引してもらえる可能性があるなど、グレーな広告に踊らされることなく、よりよい住まい探しができる材料を手にすることができるのです。